母は箱入り娘【5】
月布施のお祭りの時はいつも迎えの人が来て、正体もなくなった父を青年部の人二、三人がやっとの思いで連れて来る。こんな事が年に二回、三回あった。
深浦で一緒だった小路先生が後を追うように転勤になって来た。
月布施は野浦の隣の部落だったので、よく母と共に小路先生宅(助五郎)へ行った。
野浦と月布施の間に一寸した岬があり、その真下の海辺に流れて来た板を使って囲いを作り、一人の男が住んでいた。
皆トヂのおっさんと呼んでいた。
あまり姿を見せた事がない。お魚を釣ってはそれをお金に換えて竹筒にどっさり貯め込んでいる。
自分は石を食べているとの噂だった。
人相が悪いので子供達は恐れて、ここを通る時は一目散に走り抜けていた。
此処でも、子供達が言う事を聞かないと、トヂのおっさんの処へやるぞ、とか、蔵の中に入れるぞと言われた。
【つづく】 次は母の子供の頃の日常です。ご近所さんが一杯登場。
2018年7月5日 (木)
カテゴリー: こばやし明美先生ブログ