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母は箱入り娘【8】

2018年7月8日 (日)

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作次郎家の後ろを通って行った処に五衞ムの蔵があった。ここに千秋さんはよく閉じ込められて、ワァワァ泣き叫ぶやら戸を叩く音が年がら年中繰り返し聞こえていた。
その度に母が詫びを入れて出してやった。
こんな悪ガキでも、他人には五衞ムのカンカン(坊っちゃん)、私達はビコヤン(お嬢さん)と呼ばれていた。

その時代、父親は決して子供と遊んだり、手をつないで歩くと言う事はなかったが、我が家では朝、食事の用意が出来るまで、父は、姉と私の手を引いて海辺沿いの県道を散歩するのが日課だった。
村のはずれに城 ケ鼻と言って、海に突き出た小さい岬があった。
ここの突端に行くと月布施から、反対の強清水まで見渡せる景勝地。
日曜日は、一家して散歩に行く。
村人、特に子供は羨望の眼差しで見ていた。

つづく

次は行商人登場


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