我が家の軌跡(奇跡)【12】
母はヒーちゃんをおんぶして病院に行った。エレベータに乗ると周りの人の視線が痛かった。
ヒーちゃんはおんぶするにはもう大きい体になっていたから、こんな大きな子を何でおんぶしているのかとの好奇の眼差しを感じ、この時は惨めで辛い思いをした。
鈴木さんが手配してあったので、スムースに診察室に入れた。
先生の診断では、頭の中の手術は難しく、こうすれば必ず治りますとは言えないし、九割は植物人間のように喜怒哀楽を表す事はないでしょう。
それで良ければ手術します。良く相談して来て下さい。との事だった。
母は父とどうしよう、こうしようと散々相談したが結論が出ないまま寝た。
夜中、母は大泣きして父に起こされた。どうしたんだと言われて母はやっと我に返り、夢の話をした。
“私がまだ小学生の頃にあった佐渡丸位の大きさの船に弘美が乗っていた。
その船が少しずつ沈んで行く。やがて弘美の足の所まで海水が浸かりそうになる。 すると弘美が「おかぁさん助けて!」と、その時初めて弘美の言葉を聞いた。
そしてそれが最後だった。
何度も何度も手を差し出して叫びながらだんだん沈んで行くが、これは弘美の運命なのだから助けてはいけないと天の声がした。
私は唯ワァワァ泣くばかりでどうすることも出来なかった。”
これを聞いた父は、やっぱり頭の手術は止めようと言い、夢が結論を出してくれた。
つづく
2018年5月12日 (土)
カテゴリー: こばやし明美先生ブログ