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我が家の軌跡(奇跡)【20】

2018年5月20日 (日)

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当時、まだリモコンなる物がない時代。
父は長い棒の先を細工して、テレビのチャンネルが自分で回せるようにした。

ポットのお湯も自分で注げるように工夫していた。
ベッドもリクライニングなどないし、今のように介護用品の貸し出しサービスがない。

個人で購入できる程裕福ではなかったので、鉄製の組み立て棚を駆使して、やぐらのようなベッドを親戚に頼んで作ってもらった。

胸の位置にやぐらの上から電車のつり革を肩幅を合わせて二個下げ、自分で上半身を起こせるようにした。

食後は片手でつり革を持ち体を起こし、もう片方の手で支えて、苦労してゲップを出していた。
ゲップは体を起こさないと出ない、出さないと苦しいので時々、小さい明美は父の起こした背中に丸くなって入り、支えになってあげた。
すると父はつり革の手も離し、両手をグーにして一生懸命ゲップを出した。

上半身しか効かないので、両手での懸垂を日課として鍛えていた。

我が家の造りはお部屋のすぐ隣がお風呂になっていた。
父はベッドのやぐらからお風呂場に渡した紐に、鍛えた腕で綱渡りみたいにして母や、明美が足を持って
湯船に移動し、お風呂を楽しんだ。

長い寝て入れる洋風のバスタブだった。
妹と父が一緒に入り、父が妹の体を流してあげ、父親気分を味わっていた。

ベッドに戻るときは父の通り道には何枚ものバスタオルが敷かれた。
ある程度は拭けても、洗い場に立つことは出来ないので、水も滴るいい男よろしくビチャビチャなのだ。
母は大変だったと思う。

父が湯船に入っている間にシーツ替えたり、掃除し、尿タンクを替えておく。
父がベッドに戻ると、着替えさせ、治療をし、父はさっぱりいい気持ちになるが、母は床のバスタオルを片付けたり、お風呂場を片付けをする。
子供の明美はあまり手伝わなかったなぁ。

つづく


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