我が家の軌跡(奇跡)【29】
お部屋を借りている人の中に、シャープに勤めている男の人がいた。
独身だったので、母は時々夕食に招待した。
男手の無い家庭にとって有り難い存在。
お陰様で、父と妹は何回かドライブに連れて行って頂き、外の世界を楽しんだ。
(妹は楽しんでくれたのか確かめようがなかったが...。)
ドライブに一家で出掛けると決まると、母は大張り切り。
おにぎり、お寿司、煮物、フライ、卵焼き。
重箱にぎっしりと美味しさを、母の喜びを一杯詰めて。
父と妹の身の回りの物を用意し、ライトバンの後ろの席を全部倒してフラットにし、ベッドを作って父と妹が寝られるようにし、と、母は大変だったでしょうが、母にとっても楽しい事だったと思う。
後ろのベッドの隙間に明美も母も乗っかって、ウキウキのドライブに出掛けた。
健康な二人は本当に嬉しく、つい父の姿を写真に納める事も忘れ、はしゃいだ。
我が家の写真を撮る目的は、父に見せる為なので、その本人が一緒なのだから、撮る必要性がないからなのかも知れない。
父は多分、幻覚痛は同じようにあったのだろうが、気分転換の方が勝っていたのか、終始にこやかだった。
一枚だけ証拠写真が見付かった。
車から運び出されて満足そうに土手に座っている父。
父の右隣がシャープに勤めていた下宿人。
【つづく】つぎは、裏日本から、表日本へ一家は移ります
2018年5月29日 (火)
カテゴリー: こばやし明美先生ブログ